システム受託業務から、開発できる人材育成、そして組織づくり(デジタルやデザイン思考を活用した顧客価値創造や組織風土変革等)にまで仕事の幅を広げている 株式会社 U-NEXUS 。変化の激しいアフターコロナの時代において、必要になってくる考え方や、スキルはなにか。価値創造をすることで事業成長を遂げている 株式会社U-NEXUS 代表取締役の上野 敏良さんにお話を伺いました。
取り合うのではなく、新たな価値創造を。
もともと私は父親が経営する印刷会社に勤めていました。しかし、廃業が決まり、自分が立ち上げた IT 事業を、道半ばで終わらせるのがすごく悔しかったんです。同時に、何か新しい事業をスタートさせたい、と一念発起して起業しました。
「新しい価値を創造する」というのが会社のミッションです。会社名の「 U-NEXUS 」の「 U 」はユーザー、ユニークを表し、「 NEXUS 」は結合することを意味します。単に人が集まった集合体ではなく、1 人ひとりの強みや知識、知恵、個性を掛け合わせて新しい価値創造に繋がる結合体になっていきたい、という思いを持って会社を作りました。印刷会社時代は、デジタル化が進み縮小していく需要を奪い合うことに疲弊していました。その経験があるからこそ、奪い合うのではなく創り出したい、という想いがあります。
創業当初からの主な事業は、FileMaker プラットフォームを使用したシステムの受託開発です。現在は、お客様企業内でアプリ開発ができる人材の育成や組織づくりにも力を入れています。一つの事例が長野県に拠点を置く「信州ハム」での FileMaker を活用したローコード開発の導入です。企業の中で、アプリ開発ができる人材を育成することで、イメージを素早く形にできる組織づくりができる企業が増えたら素敵ですよね。この思いを実現するために行動を続けてきたことが、事業成長につながっていると信じています。
未来予測ができないなら、作ってしまえばいい。
今世の中が大きく動いていますが、その中でも特に思うのが、身の回りの製品やサービスが日本標準から、世界標準に大きく変わっているということです。みなさんが毎日使っているものや、ビジネスシーンで使用されているもの、SNS やサブスクリプションの仕組みなど、その多くがアメリカの企業発祥のものですよね。これからますますデジタル化が加速して、どんどんオンラインファースト・クラウドファーストになっていくことでしょう。
今の時期は、新型コロナウイルスの影響でこれまでのビジネスのあり方に制限がかかっています。しかし、これまで不況下において新しいサービスが生まれてきたことを考えると、コロナ禍をきっかけに新しいテクノロジーやサービスが次々に生み出されていくのは間違いないでしょう。そして、それがまた世界標準になっていくのではと思っています。
新型コロナウイルスの影響で「ニューノーマル」など新しい考え方や言葉がどんどん出てきていますよね。ニューノーマル時代には、これまでの経験に基づいた未来予測が特に難しい。
私の好きなドラッカーの言葉に「未来予測をする最良の方法は、未来を創ることだ」というのがあります。未来が予測できないなら、自分で作っちゃえという言葉なんです。私自身も、この言葉を信じて自ら行動し、今があると感じていますね。アフターコロナにおいても、成長を続けていくために必要な考え方は変わらず、自ら行動し続けられるかが鍵になるのではないでしょうか。
信じたことをやり続けることで、未来がつながっていく。
未来予測のできない時代においては、新たな価値創造をしていくことの重要性がますます際立ちます。新たな価値創造をするために必要なスキルには 3 つの側面があります。
1 つ目は「有用性」です。人が何に困っていて、どのような問題を解決してあげたら人の役に立てるのか。見えている・見えないニーズや課題を発見する、問題発見力です。
2つ目は「実現可能性」です。新しいアイデア、商品、サービスを思いついた時に、それを技術的にカタチにできるどうかです。
3 つ目は「持続可能性」です。いくら有用で、実現可能でも、ビジネスとして成り立たないと意味がないんです。 これらをデザインする思考が、ますます必要になってくると思っています。
いま、変化が激しい時代でスピードがすごく求められています。そうなると、システムの世界でもますますアジャイル開発 が重要になってくる。FileMaker は、アジャイル開発との相性が物凄くいいんです。刻々と状況が変わる中で アジャイル開発 を進めていくために、FileMaker プラットフォームはとても重要な役割を果たすと感じますね。
誰も正解がわからない、目まぐるしく変化していく時代に生きていく。そのアフターコロナの中心で活躍をしていきたいと思う人たちに伝えたいことは、「自分の感じたことや、これだと思ったことを信じて突き進むということです」これはスティーブ・ジョブズが言っていたことでもあります。
(原文)You can't connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future. You have to trust in something — your gut, destiny, life, karma, whatever.
(訳)先を見通して点と点をつなぐことはできない。あとで振り返り、つなぐことしかできない。だから、あなたの将来において、点と点が何らかの形でつながることを信じること。何かを信頼しなければなりません - 直感、運命、人生、カルマ、何でも構わない。
まずは目の前のことに全力で取り組んでみる。そうしていくうちに一見関係のないもの同士が繋がって、新しいものや仕事、考え方が生まれてくることがあります。私自身がまさにそうなんです。まさか昔自分が夢中になって使っていた Mac や FileMaker が、将来自分のビジネスに繋がるなんて全く思っていませんでした(*)。これはまさに私にとって点と点が繋がった瞬間ですね。それがたとえ直接仕事や就職に繋がらなくても、やがて点と点が繋がるときが来るはずなので、自分の気持ちの赴くままその時に必要だと思ったことを信じてやってみる。そうすれば、おのずと自分の道が拓けるのではないでしょうか。
* 編集者注:株式会社 U-NEXUS は、ACN(アップルコンサルタンツネットワーク)のメンバーであり、FileMaker を提供する Claris 社の認定パートナー(Claris パートナー)です。
[ 編集後記 ]
VUCA の時代の中で、新たな価値創造のために必要な考え方や、視点を語ってくださった上野さん。その思考と、根底にある熱い思いが重なって、当初のシステム開発から、人材育成、組織づくりと業務の幅を広げて事業成長を遂げています。経営資源として抱えていたものが意味を持たなくなるようなシステムを導入することによって、資産を負債化させてしまう企業が増えてきているなかで、変化して当たり前、むしろ変化することを楽しむ、というマインドセット で、今までの延長線ではない、全く違う時代であることを意識して、行動する上野氏率いる 株式会社 U-NEXUS が、将来業界の概念を覆すようなサービスを長野県から発信されることを期待しています。