多くの企業で発生しうる雇用のミスマッチ。こんなはずではなかった…と入社後に感じる若者が後を絶たないのは、自分が大切にしたい想いとまっすぐ向き合うから。「若くして仕事を任される」という言葉の裏には、人それぞれの受け取り方があり、配属される部署や仕事内容によってその社員の想いが大きく揺れ動く。新卒入社3か月で辞表を提出し、新しいキャリアを歩みだした若手エンジニアに、仕事のやりがいをインタビューしました。
「世の中を、フラットに。」というビジョンを実現するべく、サブスクリプションやシェアリングエコノミーでのサービス開発に力を入れている 株式会社 C-mind は、定額制レンタルプリンターサービス、リクルートスーツのレンタル事業、IT コンサルティング事業、Web 広告事業など複数の事業を展開しています。
同社で基幹システムの開発から運用までを一手に担う大役を担っている秡川雅之さんは、20 代で責任ある業務を任されていますが、その経歴は実にユニーク。 2016 年 4 月に新卒で入社した 株式会社 C-mind で、営業職を経験後、3か月で会社を離れることを決断します。理由は「想像と違っていたから」。辞表を提出するも、同社代表の真剣な態度と熱い思いに感化され、総務部門に配属変更となりました。
ベンチャー企業での総務部門は、一般企業の総務部門とは異なり、多くのタスクがあります。メールアドレスの発行管理・LAN 構築・会社サイト更新・OA フロアの施工…。結果として、この配属がきっかけで社内システムを構築するエンジニアへと転身。多くの企業で発生する「雇用のミスマッチ」を自ら体験し、同社内でこれを解決した当事者の秡川さんが大切にしてきたポリシーやマインドは、どのようなものだったのでしょうか。
ゼロからの再スタート。
私が今携わっているのは、いわゆる会社の情報システム全般です。主に FileMaker プラットフォームを使って情報基盤を整えています。例えば、顧客管理(CRM)や営業進捗の管理システム(SFA)、人材紹介事業では、初回の接触からコンバージョンまで管理するシステムなどをFileMaker上で開発・運用しています。FileMaker の魅力はなんといってもマルチプラットフォームで開発ができることですね。Windows、Mac、モバイルなど異なるプラットフォームに対応するシステムを開発したい時に、手間が少ないですし、他言語と比べて習得が容易なんです。私自身も独学で社内運用できるレベルのシステム開発ができるようになりました。
今では情報システムの他にも総務としてありとあらゆる社内業務を任されていますが、実は一度この会社を辞めたことで現在のキャリアを築くことになりました。もともとは新卒で営業として入社。しかし、営業職が肌に合わず、3か月ですぐに辞めることにしたんです。ところが社長のもとへ退職の挨拶に行ったことで、社長の業務をサポートするポジションで戻ってくることになり、総務配属となりました。そこで改めて、この会社で自分の存在価値を認めてもらうために意識したことがあります。
それは何か会社のことで問題意識や疑問をもったら、『〇〇のことなら秡川に聞こう。』と言われるくらいの第一人者になること。一緒に働く仲間にとって有意義な存在になろうと心に決めてがむしゃらに、ひとつひとつの問題解決を通じて経験を積み上げてきました。
自分が成長するために仕事をする
私は学生時代、外国語学部でしたので、情報システム系の専攻をしたわけではありません。ただ、幼い頃からパソコンに触れる環境があって、ゲームも好きでした。IT専門ではなかったけれど、社内で情報システムの仕事を受け持つからには、知らないことや答えられないことはないようにしたい。その想いの原点は、学生時代にあります。大学当時は教師をめざしていて、英語を学んでいました。でも、正直、勉強が好きではなかったんです。だからこそモチベーションをあげるために、なぜ勉強するのかという意味を考えるようにしていました。私にとって勉強の意義は、『聞かれたときに答えられる』知識を身に着けることにありました。そのうちに英語の表現の豊かさに気づいて、文化を知って深掘りして学ぶ面白さを感じられるようになりました。それが今の仕事観に活きているような気がします。
私が情報システムの仕事をするようになった当初は、会社に基幹システムがない状態でした。そこで FileMaker プラットフォームを導入することに。システムの切り替えや構築のために最初は開発ベンダーにお願いしていました。ただ、これまで使っていたシステムから切り替えて構築してもらうにしても、FileMaker で何ができるのかある程度わからないと当社の要望もうまく伝えられません。しかも営業職が主体の会社でしたので、情報システムに詳しい専門職もいない状態。このままではちょっとした困りごとでさえも、社内で解決ができないと思いました。そこで自分で勉強を始めたところ、FileMaker の面白さにのめりこんでしまったんです。最終的にベンダー並みに詳しくなったことで、FileMaker でシステムを内製することになりました。自分で開発したシステムが社内で使われている様子を見ると、自分のゼロからの成長を感じられますし、誰かのために役に立てたという達成感が味わえるので、とてもやりがいを感じますね。
情報システムで難しいのは、会社によって運用が違うこと。他社を参考にしたくても、機密情報を含むこともあるので、公開されている情報が非常に少ないです。ネット上で検索するだけでは情報が得られないことも多いので、詳しい方に時間をいただいたりして、必死に勉強しています。現在、社外向けの新しいシステムも FileMaker プラットフォームでローコード開発を進めています。使いやすいシステムを完成させて、会社の事業に貢献すると同時に社内の仕事環境もより良いものにしていきたいですね。
Fake it till you make it!
総務配属当初、仕事が少なかったころを振り返ると、今では自分で創出した仕事で毎日が充実していると感じています。 特に、FileMaker でシステム開発ができるようになってからは、新しく『これをやりたい!』となった時に初動が早くなりました。それが実現できたのは、FileMaker と 業務知識や経験が積み重なったからかもしれません。最近では、社内で何か新しいことを始める時に、システム担当というより、もう少し上のレイヤーで仕事を任せてもらえるようになったのは嬉しい変化です。
もともと、若手のうちから自分の裁量で仕事をしてキャリアを築いていきたいと考えていたのですが、内心では、会社を退職した瞬間に、理想のキャリアプランから 1 度外れてしまったという自覚がありました。だからこそ、その逆境からどう自分を伸ばしていくのか突き詰めていって、『必ず結果を残す!』とここまで試行錯誤しながらやってきました。プレッシャーや、誰もやったことがない仕事にチャレンジしていく難しさは、正直あります。でも、それさえも私は楽しむようにしています。人生の大部分の時間を仕事に投資してるわけですから、仕事の面白さを感じないともったいないと思いませんか。
英語のことわざでも Fake it till you make it! (できるようになるまでできているふりをし続ける)という言葉があるように、できること、勝てることを何か 1 つでも見つけて、まずは楽しむふりをしてみる。楽しんでやっているうちに、必ず道が拓けると私は信じています。
〈編集後記〉
新卒で入社した会社に違和感を感じて転職を考える人は、とても多いと思います。それでも3か月で辞表を提出、雇用のミスマッチを自らの力で軌道修正して、新たにキャリアを築いている秡川さんとのインタビューの傍らで興味深かったのは、株式会社 C-mindでは社内基幹システムを通じて社員のキャリア育成と情報共有が機能している、ということです。「正確な情報をもっていなければ、責任ある仕事をすることができない。正確な情報をもっていれば、責任ある仕事をせずにいられなくなる。」
社員に会社の状況をはっきり理解させ、自分がオーナーになったつもりで行動することを社員に促す…年齢に関係なく経験や意欲というパワーを解き放ち、目標達成のためにいかんなく力を発揮させる組織力、まさに「世の中を、フラットに。」というビジョンを感じたインタビューでした。情報格差がない組織、その実現に FileMaker プラットフォームを採用いただいていることに改めて感謝します。ありがとうございます。
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