(本記事は、米国の Claris Blog に投稿された英語記事の日本語訳となります)
国際女性デーを記念して、私たちは Claris FileMaker を使ってキャリアアップに成功された女性たちにインタビューしました。
米国だけでなく、コロンビアや日本の女性開発者たちも取材に応じ、IT 業界において女性であることがどのようなものかということ、そして、より包括的な業界に向けての共通のビジョンを語ってくれました。この志高い女性たちのキャリアの軌跡をご紹介します。
ファッション業界から開発者の世界へ
株式会社スプラッシュ Senior Developer 与座さつきさん
大学では法律を学び、在学中はコンピュータについて学ぶ機会がほとんどなかったという与座さつきさん。法学士の学位を取得し、卒業後はファッション業界でキャリアをスタートしました。ある時、イタリアのファッションブランドの修理工房を立ち上げるプロジェクトの責任者となった与座さんは FileMaker に出会います。「12 年前、勉強のために初めて参加した FileMaker のワークショップに意外にも多くの女性が参加していたことに驚きました。それにみなさん、とても楽しそうだったんです。内容の半分もわからない中でも、なんだか FileMaker って楽しそう!とワクワクしました。」と与座さんは振り返ります。その後、ワークショップで出会った蜷川晋さんの経営する株式会社スプラッシュで、開発者としての道を歩み始めます。
「この仕事を始めるまでは、IT 専門の学校を卒業した人でないと開発者になれないと思っていました。私は数学が苦手で、ソフトウェア開発に向いているとは考えていませんでした。実際にこの仕事に就いてみて、いま感じているのは、私自身も含めて自分の得意なスキルを武器にできる懐の広い職業だということです。」
出産や育児など、女性はライフステージによって仕事への関わり方を変えざるを得なくなる可能性が男性よりも高くなりがち、と与座さん。「性別にかかわらず、ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける環境がこれからは大切だと感じています。ソフトウェア開発の仕事は、コンピューターとネットワークさえあれば場所を選ばず働けるという強みがあり、他の分野よりも長く続けやすいと思います。」と、開発者になることが女性のキャリア形成にもたらす可能性について語ってくれました。
研究室で芽生えた開発者としてのキャリア
i2eye プロジェクトマネージャー ベアトリス・ビービエンさん
学生時代から科学と数学に魅了されてきたベアトリス・ビービエンさんは、生化学の博士号を取得した後、90 年代に研究室で働き始めました。それは、分子生物学的技術の対話型ガイドのプログラムを作っていた時のことです。「非常に楽しかったのです。」と語るベアトリスは、開発の楽しみを実感したその瞬間から、開発者への道を歩み始めていました。ベアトリスはこのプロジェクトをきっかけに、研究室のすべての機器をリレーショナルデータベースを使って運用し始めしました。「この時点で、日々のタスクをコントロールすることで研究がいかにはかどるか実感しました。」と彼女は付け加えます。
ベアトリスはラボに関する深い造詣と開発への情熱に支えられ、癌から眼病にいたる疾患の臨床試験を管理する新しいデータベースを作成しました。その後フルタイムで開発を行うようになり、法律情報からクライアントの連絡先まであらゆるものを管理できるデータベースも構築しました。ベアトリスは、テクノロジーと人との橋渡しができる能力が自分の強みだと考えています。「技術に精通しているという事はひとつの能力ですが、ユーザーに有益なものを作るだけでなく、快適に使える工夫ができるのというのはまた別の能力です」と彼女は言います。女性は独自の視点を持っているため、開発者として活躍できる道があるとベアトリスは考えています。
「 FileMaker コミュニティの中には、ジャーナリズムやアートデザインなどの他の分野でのスキルと実績を持っていて、FileMaker での開発の際にその幅広く深い知識を活かしている女性がたくさんいます。そのため、この業界に女性がもっと増えれば、男性では思いつかない種類のテクノロジーを作り出せる、と思わずにいられません。個人的には、女性の開発者が増えるにつれて IT 業界の現状や、アプリ開発の成功の意味が再定義されていくと考えています。」
女性として IT 業界に身を置いてきたことで、ベアトリスは数々の性差別発言を受けてきましたが、その中でも特に嫌だったのは、発言を途中で阻まれたことだとベアトリスは語ります。「会議中に言い返されている女性はとても多いです」と彼女は述べています。しかし、この問題は簡単に解決できそうです。「IT 業界に女性が増え、会議の席に座る女性が増えていけば、女性のアイデアが取り入れられることが増えるでしょう」と彼女は語ります。
丸太小屋からシリコンバレーへ
ソライアント・コンサルティング 副社長 ジリアン・ジェントリーさん
ジリアンは、テクノロジーのキャリアとは程遠い、米国アラスカ州のユトキア・ターンヴィク(旧バロー)で生まれ、電気も水道もない丸太小屋で育ちました。「私は辺鄙な場所で育ったので、日常的にテクノロジーに触れる事もなく、技術者になるなど考えたこともありませんでした。」とジリアンは語ります。
彼女は遠くに引っ越すことを夢見ていましたが、一方を凍てついたツンドラに囲まれ、他方を氷の海に囲まれているその町では、かなえるのは難しい夢でした。町を出る唯一の方法は飛行機でしたが、彼女のような子供にはとても払える額ではありません。ジリアンは何か違うことをしたいと願っていましたが、カリフォルニアに引っ越すまでは、テクノロジー分野のキャリアで成功するとは思ってもいませんでした。
「私の家族は誰も大学に行っていません。けれど、私は違う人生を送りたいといつも願っていて、教育を受ければその道が開けると知っていました。私と同じように変わりたいと考えている女性は多いと思いますが、どうやって始めれば良いのかわからないのではないでしょうか。だからこそ、みんなを、特に僻地の人たちを励まして、技術分野に活躍のチャンスがあることを知ってもらうことが重要なのです。
そして、助けになりたいと思っている人たちがいることも知って欲しい。このメッセージを幼かった自分にも届けたいです。」とジリアンは説明します。
より多くの女性がテクノロジーの分野で活躍するための第一歩は、『テクノロジーはあなたのためにあるのです!』と声高に叫んで、そのメッセージを伝えることだと思います。次に、この分野で本当に活躍していることを体現する女性の存在が必要です。最後に、女性のメンターの助けを借りながら、技術系のキャリアに繋がるような技術習得の機会に参加するように促す必要があります。」と彼女は言います。
さらにジリアンは、メディアで見かけるようなソフトウェア開発者になる必要はないということを女性に知ってもらいたいと続けます。「私は、女性にローコードの概念を理解することを心からお勧めしています。FileMaker なら、座って長いプログラミングコードを書く必要はありません。クリティカル・シンキング*ができ、問題を解決する方法を知っていれば、ローコードで大成功を収めることができるのです。」とジリアンは結びました。
*クリティカル・シンキング: 今考えるべきことは何かを明確にし、何のために考えるのか?結論に達しても、本当に?どうして?という問いを続けて考え抜くことで自分の思考の癖や隠れた固定概念を見つめ直す考え方。
生まれながらの問題解決者
シカゴ公立学校 データマネージャー クリス・スナイプさん
クリシャワナ "クリス" スナイプさんは、物心がついたときから技術や機械を扱うのが得意でした。「家の中で何かが壊れたら、私が修理していました。11 歳の時には BASIC でコーディングをしていて、人の誕生日を推測する小さなプログラムを作ったりしていました。ゲーマーだったので、ゆくゆくはゲームプログラマーになりたいと思っていました。」とクリスは語ります。その目標達成のために、クリスは全額奨学金でアイオワ大学に通ってコンピュータ サイエンスの理学士号を取得し、その後、ビジネス情報システムの修士号を取得しました。
コンピュータ科学の授業はクリスにとって子供の頃に楽しんだビデオゲームほど刺激的ではなかったため、卒業後にテクノロジーの分野で働きたいとは思っていませんでした。ですが、彼女はシカゴ公立学校でデータアナリストとしての仕事に就き、学校システムのデータベースを作成した開発者と知り合いました。「彼女はモリーという名前ですが、私は彼女を 私の ”shero”(she+hero: 女性の英雄)と呼んでいます」とクリスは語ります。「私に FileMaker を紹介してくれたのは彼女でした。FileMaker を知ってすぐに、そのすごさがわかりました。私は FileMaker を使って、シカゴ公立学校の申請プロセス全体を刷新したのです。」と、クリスは絶賛しています。
黒人女性であるクリスは、自分は何度も過小評価されてきたと言います。それが、彼女がクリスという、性別が判明できない省略名を好む理由の一つです。
「クリスという名前の女性はたくさんいますが、技術の世界で私の名前を見た人は私を男性だと思うようです。一般的には私のような高い技術レベルの黒人女性は想定外のようで、往々にして私は基本的な能力テストを受けさせられ、基本的なデータベース開発や、時には Excel での作業ができることを示して開発者であることを証明する必要があります。この業界はまだまだ男性社会であると感じます。とは言っても、私は人を驚かせるのが好きなのです。障壁を打ち破る爽快感がありますから。」とクリスは付け加えました。
大胆なキャリア転換は、正しい決断
Proof+Geist チーフスタッフ クリッシー・フェリスさん
クリッシーの開発者としてのキャリアは、医療機関で運営に携わっていたときに始まりました。その医院では、患者の健康指標を記録するための、より良いシステムを必要としていました。「ソフトウェアを探し始めた時に、FileMaker を見つけました。FileMaker を使ってシステムを一から構築し、その後、より複雑なデータ管理ができるように修正しました。」と クリッシーは話します。彼女は開発をすることが好きで、自分にその才能があることに気付きました。「カスタム App の成長に伴い 私の FileMaker 開発スキルも向上したので、開発を自分のキャリアにしようと決心しました。 」クリッシーが開発者としての新しいキャリアをスタートさせたとき、その医院は、FileMaker のカスタム App を管理するために、以前より高い職位の新しい肩書きで彼女を再雇用しました。
クリッシーは、今回インタビューに応じてくれた他の女性たち同様、コンピュータサイエンスの学位を持っていません。実際、彼女は比較宗教学の文学士号と社会学の修士号を取得しています。技術的なキャリアを築くにあたり、クリッシーはメンターを探し、アドバイスとインスピレーションを得ていました。「この分野に入ってくる人には、できる限り大胆になるようにアドバイスしています。始めたばかりの頃、私はただ深呼吸をして、怖かったけれども、尊敬する人に助けを求めていました。私がアドバイスを求めた時、誰も『ノー』とは言わなかったものです」とクリッシーは振り返ります。
クリッシーは、スタッフのチーフとしての役割に加え、非営利団体「 WITfm(Women Innovating Together - FileMaker )」のリード・ファシリテーターも務めています。この組織は、女性に限らず、あらゆる性別の人がサポートを受けられる素晴らしい場所を提供しています。WITfm は「くだらない質問」をするための場所であり、批判されない場所であり、励ましの場でもあります。この場所こそが、私がアドバイスを求めに行くことができる所なのです」と彼女は語ります。クリッシーは、技術職を考えている人やこれから始めようとしている人に、FileMaker コミュニティの人たちが歓んで迎え入れてくれることを知ってほしいと願っています。尊敬する人に連絡を取るだけで、喜んで指導者役を引き受けてくれたり、サポートをしてくれたりすることがよくあります。また、もし時間や余裕がなければ、たいてい適任者を紹介してくれます。」と付け加えています。
クリッシーは開発者になって嬉しいことのひとつとして、自分のライフスタイルを選択できる自由がある点を挙げています。「一緒に働く人や自分のワークライフを選ぶことができるのが、私にとって大きな魅力でした。」とクリッシーは説明します。「このキャリアには、もし望めば 5 週間の休暇を取ることも、自分に合う方法で日常をつくりあげることもできる柔軟性があります。他の仕事ではこのような柔軟性は、なかなか望めません。技術系のキャリアを考えている女性にアドバイスしたいのは、問題を解決することが好きなら、FileMaker でカスタム App を作ると幸せになれるということです。
Women Innovating Together (WITfm) への参加方法については、こちらをご覧ください。